「すごく仲良しの友達にならなきゃ」万能生徒会長、ぼっちギャルに懐かれる
「いーねぇ!お友達いっぱい居て!」。とある地方都市の高校。男子を“たぶらかした”ことで反感を買ったギャルの沙愛子(さなこ)は、追ってくる女子たちから逃げようと生徒会室に飛び込んだ。そこにいたのは生徒会長の結糸(ゆいと)。冷静沈着な彼を気に入った沙愛子はいきなり告白するも、結糸はそれを断る。「男女交際を禁ずる」という校則を盾にアプローチを退けつつイジメから庇ってくれた結糸に、沙愛子は「友達になるのは校則違反?」と尋ねる……。
友達とは“心で繋がる卍”?「友達の規則」、そして「当たって砕けろ精神」
表紙とタイトル、冒頭の展開に「ちょっとエッチなラブコメ?」と思ったのは筆者だけではないはず。しかし、沙愛子のキワドイ距離の詰め方の真意が明かされてからが『友達として大好き』の本当のスタートだ。彼女の常識はずれな振る舞いは「人の気持ちがわかんない」ため。本能的な関係構築しかこれまでできていなかったのだ。
こうして“人付き合いのルール”を求める彼女に懐かれた結糸も、逆に枷をかけがちな自らの人間関係に影響を受けていって……というのが本作の見どころとなる。
あくまでも悪気がない沙愛子が“友達”について思い悩みながらとる言動は愛らしく、そして痛々しい。「触らなくても、一緒の空間に居なくても友達だ」と説いてくれた結糸と、帰り際に「バイバイ」と声を掛けあった沙愛子の表情には胸を揺さぶられる。一方の結糸も、沙愛子の「本当に伝えたいことをすぐ言える」部分に憧れており、関係を悩む兄に“当たって砕ける”場面がある。ふうと息を吐く姿に、自分を重ねる読者は少なくないだろう。
“友達の作り方”なんて、分かるようで分からない。それでもきっと友達になれるはず
こうして、正反対だけにすれ違い、そして影響を与えあっていく沙愛子と結糸。第1巻のハイライトは、結糸とより自然に一緒に居られる環境を求めた沙愛子が、まさかの行動を取り思いの丈を伝えるシーンだろう。“友達の作り方”なんて、分かるようで分からないし、そもそも「正解」がないものだ。しかし、真正面から苦しみつつ変わっていく彼らの友情譚は、きっと誰にとってもよき写し鏡となるはず。このほど完結した全3巻、ぜひ一読を。