切なくも温かい珠玉の恋愛漫画短編集。胸に秘めた朧げな青春が蘇る——―『ミッドナイトブルー』

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『ミッドナイトブルー』(須藤佑実/祥伝社)
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人の数だけ存在する甘酸っぱい恋愛模様に触れる

人の数だけ考え方と価値観が存在する。恋愛も同様、カップルの数だけその在り方がある。幸せの形もそれぞれだ。誰かの他愛もない恋愛模様を覗き見たいと思った時、ぜひ読んでもらいたい物語がある。

『ミッドナイトブルー』は、ふと思い出される甘酸っぱい青春が詰まった恋愛漫画の短編集。ノスタルジックな雰囲気に溢れ、何故だか胸がキュッとなる懐かしさを感じる。失敗こそあれ、人生にはっきりとした間違いはない。過去も未来も、それが如何なるものであるかは自分自身で決めるものだ。

本作を読むと、朧げで儚い想い出がそっと色付き、大切なものだと感じられるようになるかもしれない。

本作には7つのストーリーが収録されている。

秘密を抱える高校教師とその元生徒の再会を描いた「箱の中の想い出」、年上のアナウンサーに憧れる女子高生を写した「夢にも見たい」、男性がとあるバーでかつて経験した不思議な出会いを語る奇妙な話「今夜会う人」、失踪した植物研究者の兄を待ち続ける女性に恋した弟を描く「花が咲く日」、大学の先輩に恋した青年とその先輩の再会を描いた「白い糸」、不可思議な夫婦の生活と行く末を見つめる「ある夫婦の記録」、仲間の1人の死後も、2年に1度集まりを続ける天文部の同級生3人の姿を追う表題作「ミッドナイトブルー」。人生も恋愛も、みんな違ってみんな良い。ただ後悔だけはないように「その瞬間を生きていたい」と思わせてくれる。

著:須藤佑実
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切なさと不思議な郷愁に包まれる、よく出来た数々の物語

どのストーリーも短いながら奥深く、簡明かつよく出来た構成である。ふんわりとしたタッチの優しい絵柄には、どことない切なさとノスタルジアを感じる。登場人物たちの微妙な感情もよく表現されていて、中でも、はにかむような女性の表情は秀逸。一冊を通して温もりに包まれる。

想い出は時に美化され、時にまるで風化されない。そっと心に閉まって“良い想い出”にすることもできるし、想い出の枠組みから外すことだってできる。本作では、登場人物たちの過去と現在、その先(未来)が巧みに表現されている。当然ながら過去が現在を作り、今の自分が未来を形作るのだ。

「箱の中の想い出」には、“価値観の違い”が見事に描出されている。それは大変重要なもので、バンドを解散させることもあれば、カップルを別れさせ、友情を壊したりもする。価値観は共有しなければ違いなど分からない。人と関係を深めるうえで、価値観の共有は必須なのである。これは「ある夫婦の記録」にも通ずる。夫婦で価値観を共有し、相互理解していれば、たとえ他人からは奇妙に見られても幸せは確かに在る。

筆者のおすすめは「今夜会う人」。あったらいいなと憧れる素敵な物語で、オチが素晴らしい。奇跡を起こすのは、いつだって人の思いである。

恋愛を成就させるため、ひいてはより良い人生を送るためのヒントが隠されている本作。物語は多彩だが、どの物語に触れても心がホッと温かくなる。

サラッと読めて読後感は爽やか。繊細な感情の表現が良質で、不思議と共感度が高い。最後には読者の想い出もその形を変えているかも。

胸にしまったぼんやりとした青春が鮮やかに色付く瑞々しい1冊

『ミッドナイトブルー』は、須藤佑実氏による、どこか切なく美しい恋愛漫画を集めた傑作短編集である。女性向け漫画雑誌「フィール・ヤング」(祥伝社)にて2015〜16年に掲載された7作品をまとめた単行本。

読後にちょっぴり切なくなる青春を象った短編集。

読者の過去にも似たような経験があるかもしれない。過去は現在へと続き、勇気を持って一歩踏み出せば、未来もきっと変わる。人の思いは実に尊く、さまざまな出来事を呼び起こす。肝心なのは行動すること。先のことなど考えず、その瞬間に思いを伝えること。本作には、そんな「あの時行動していたら」と思わせる物語があまたある。

さっくり読めて、深い余韻に浸れる一風変わった名作。

さて、読後に皆さんは何を思うだろうか?

著:須藤佑実
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この記事を書いた人

フリー編集・ライター。ライフスタイルやトラベルなど、扱うジャンルは多種多様。趣味は映画・ドラマ鑑賞。マンガも大好きで、日々ビビビと来る作品を模索中! 特に少年・青年向け、斬新な視点が好み。

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