アラフォー世代のバイブル『ほしいものはなんですか?』に見る、ほんとうのしあわせとは?

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ほしいものはなんですか?
『ほしいものはなんですか?』益田ミリ (著)/ミシマ社

映画化もされて話題となった『すーちゃん』や『週末、森へ。』などでも知られるイラストレーターの益田ミリが、専業主婦のミナ子(40歳)と独身のタエ子(35歳)という二人の女性のつぶやきを通じ、アラフォー世代の女性の生き方をやさしく綴った『ほしいものはなんですか?』。ミナ子の娘で、タエ子の姪っ子である小学生・リナの視点で、あまりにもあたりまえすぎて見落としていることにフォーカスを当て、自分を見つめ直すきっかけを与えてくれるバイブル的な1冊だ。ささくれ立った心にじんわりと沁みる、本作の魅力を紹介したい。

目次

物事の本質にズバリと斬りこむフラットな視点

まず、益田ミリ作品の特徴として筆者がもっとも共感できる点は、常にフラットな視点で物事を捉えているということ。結婚していても、していなくても、子どもがいても、いなくても、もっと言えば、女性でも、女性でなくても、誰しも皆小さな悩みを抱えながら生きているという、当然だけどついうっかり見過ごしてしまいそうなことが、可愛らしいイラストとともに、とてもシンプルに綴られているのだ。

なかでもこの『ほしいものはなんですか?』においては、第3者であるリナが、社会的な立場や考え方の異なる二人の女性の間を‟意志を持つメッセンジャー”として行ったり来たりすることで、孤立しがちなアラフォー世代の凝り固まった心を一瞬ざわつかせ、スーッと沈めてくれる役割を果たしている。

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「ほんとうにほしいもの」は「保証」と「存在感」?

ある日、姪っ子のリナと一緒にクリスマスプレゼントを買いにデパートに出かけたタエ子は、帰り道「35歳にもなると、ほしいものって、そんな、ないんだよね~」とつぶやき、「わたしがサンタクロースにもらいたいものと言えば……」と悩んだ挙句、「保証、かな?」という、夢のない答えを口にしてしまう。だが「それ、誰かにもらうものなの?」というリナの的を射た問いかけを受け、「さあ、どうだろう。わからない」「だけど、誰かひとりの人にもらうものではないのかもね」という結論にたどり着く。

その夜、リナは寝床で「ママが今、一番ほしいものって何?」と母のミナ子に聞くのだが、「そうねぇ、そう言われてみると、ないかも。ほしいものがないって幸せなことかもしれないよ~」とミナ子は一旦はぐらかす。だが、そこですかさずリナが「タエちゃんは『ホショウ』がほしいんだって」と切り出すと、ミナ子は「それを言うなら、ママは存在感がほしい」と、娘を前に本音を漏らすのだ。

「あえて言うなら……」に隠された本音にドキっとさせられる

「ほしいものはなんですか?」という問いかけに「特にない」と即答しかけて「でも……」と、「保証」や「存在感」を挙げてくる時点でタエ子もミナ子も恵まれている。なぜなら、どちらも物質的に足りないものではないからだ。「保証」がない代わりにタエ子には「自由」があり、「存在感」がない代わりにミナ子には「いつでも頼れる家族」がいる。

所詮、人は隣の芝生が青く見えるものだし、何を言っても「無いものねだり」であると分かっているからこそ、大人になったら皆「ほしいもの」なんて口にしない。でも「あえて言うなら……」の中にこそ、自分をしあわせにするヒントが詰まっている。「ほしいものはなんですか?」は、きっと誰しもが心の奥底に秘めている「ちょっぴり後ろめたい感情」や「わたしだって」という気持ちにも、そっと寄り添ってくれるにちがいない。

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この記事を書いた人

インタビュアー・ライター。主にエンタメ分野を中心に、著名人のインタビューやコラムを多数手がける。多感な時期に1990年代のサブカルチャーにドップリ浸り、いまだその余韻を引きずっている。

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