読みたいマンガと「読み方」が見つかるマンガ情報サイト- LOMICO(ロミコ)

「半裸鳥頭」の主人公が活躍する『シャングリラ・フロンティア』は純粋にゲーム攻略を楽しむ姿勢&共に冒険している感が爽快

シャングリラ・フロンティア
『シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜』不二 涼介著・硬梨菜原作/講談社

※軽いネタバレあり

異世界に転移も転生もしないが、主人公は半裸で鳥頭!?

雑誌にWEBと掲載メディアを問わず、数多くの新作が登場する中、ふと立ち寄った書店で見かけた表紙のイラストと帯に記された「最強無類のクソゲーマー現る!!」のキャッチコピーが目に飛び込んできた。それが本作、『シャングリラ・フロンティア』との出合い。そしてページを開くと、いきなり覆面&海パン男がヒロインらしき少女をぶん殴るシーンから開幕という、なんともフック強めな作品だ。

そんな本作は小説投稿サイト「小説家になろう」の人気ライトノベルのコミカライズ版。 いわゆる「クソゲー」を愛する主人公・陽務楽郎(ひづとめ・らくろう)が、プレイヤー数3000万人を誇る“神ゲー”『シャングリラ・フロンティア』に挑戦していくというストーリーが描かれる。

表紙のテイストからは「異世界モノ」的な印象を受けるが、本作では主人公が「転移」や「転生」するのではなくゲーム内の世界が舞台。なろう系ファンタジーながら、あくまで主人公は1人のプレイヤーなので、異世界モノに食指が動かない人も受け入れやすいのでは。

それでは表紙のイラストはいったい……という疑問は、第1話「貴方はなんのためにゲームをしますか?」で明らかに。言ってしまえば楽郎が行ったキャラメイク結果で、小説では読み手が想像するしかなかったが、マンガで描かれた“半裸鳥頭”のビジュアルはかなりシュール。しかも“ある理由”から楽郎は胴と足に装備品を着けられなくなるのだが、1周回って不思議な愛着が湧いてくるから面白い。

RPG的な要素をふんだんに取り入れた演出&あるあるネタがクセに

ビジュアルばかりに目がいきがちだが、楽郎のキャラメイク自体も興味深い。この手のゲームでは用意されたパーツからプレイヤーが自由に外見などを選択できるのが魅力だが、このときに何を優先するかに性格が出やすい。ゲーマーなら何を優先するかに長考してしまうところでもある。

ちなみに楽郎は良質な武器を早く入手するため初期装備をすべてゲーム内通貨に交換。しかも初期能力値として「幸運」が高め。それによるものかどうかは不明だが、まさに“運”に導かれるかのような伏線が序盤からさりげなく投入されていることが第4話でわかるのも仕掛けとしては上々だ。

バトルが始まると、都度挿入される「○○を装備しました」「LEVEL UP」「条件達成○○○を覚えました」といったセリフ以外のゲーム要素を示す描写が、読者も一緒にプレイしているような気分が味わえて好感が持てる。

しかもMMO(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)らしく他プレイヤーからのアドバイスがあったり、良い武器GETのために素材を集めたり、プレイヤーの能力やスキルを数値で可視化などゲーム的な要素が満載。さらに「夜行性のモンスターは危険」「『仲間を呼ぶ』は弱いモンスターの特権」のような、いわゆる“ゲームあるある”ネタも豊富でゲーム好きなら思わずニヤリとするだろう。

ゲームファン以外にも勧めたい。主人公と一緒に旅する冒険譚のワクワク

このようにゲーム的なギミックがいくつもある作品だが、ゲーマー以外でも共感できるポイントを挙げるなら、主人公が操作するプレイヤーがチート能力を持つわけではないこと。異世界モノなどで多く見られるのが最初から「ステータス最強で無双」という展開だが、本作ではレベル1からスタートし強くなっていく。成長過程を共に歩めるのは、冒険譚としても魅力的だ。

それでいて楽郎は“クソゲーハンター”としてゲームの腕は一級品という設定なので、数々のクソゲープレイで培ってきたノウハウを生かして、工夫により他者より優位に戦闘を切り抜けていく描写も。ある意味“主人公補正”とも言えるが、現実でもあり得る範囲内の設定でテンポ感&爽快感を生み出し、味つけは悪くない。

とはいえ、ただのゲームプレイマンガだとゲーム好き以外には淡白な展開に見えてしまいがち。そこで、主人公の特別感を出すべく用意された「ユニーク要素」との遭遇が効いてくる。最初に「運」のステータスに振りすぎたせいか、世界に1体しかいないユニークモンスターや、発生条件が明らかにされていないユニークシナリオなどが早々とお目見え。第1話ラストに背中だけ描かれたゲームプログラムを見守る人物が登場し、『シャングリラ・フロンティア』のゲームの外側の世界に関わるような謎を提示し購読意欲を刺激してくるのだ。

ゲーム要素を取り入れたタイトルだけに専門的な用語も登場するが、その都度モノローグや登場人物のセリフなどでかみ砕いて説明してくれるので心配無用。作中ゲームも世界設定がきっちり構築されていて、主人公が純粋にゲームを楽しんでいる姿も心地いい。

まだ連載がスタートしたばかりで、コミックスも12月に第2巻発売とリアルタイムに追いつくには十分な射程圏内。この先ゲーム攻略と仕掛けられた謎の数々に楽郎がどう挑んでいくのか。一緒に“プレイ”を堪能したい。

SNSでフォローする