『ふたりソロキャンプ』野営を愛する野暮男と、ド素人キャンパーの女子短大生が織りなすキャンプ漫画

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ふたりソロキャンプ
『ふたりソロキャンプ』(出端祐大/講談社)

孤独を愛する“おっさん”ソロキャンパーと、ソロキャンプ素人な女子短大生の凸凹コンビが繰り広げる、ちょっぴりコミカルなアウトドア漫画『ふたりソロキャンプ』。年齢、性別、キャンプ歴を問わず楽しめる作風から、キャンプ初心者向けバイブルとしても役立ちそう?

目次

おっさんと女子のふたりでソロキャンプ?

主人公の樹乃倉厳(34歳・独身)は、孤独な野営を愛する生粋のソロキャンパー。車を使わず、電車・バス・徒歩で大自然の懐に包まれつつ、火と木と水、そして土と星空を愛でる孤高の男……。

などと大げさな表現はともかく、要はソロキャンプで焚き火を前に、酒をグイッとやらなければ生きていけない野暮男なのです。

そんな厳の前に、唐突に表れたのがヒロイン・草野雫(20歳・短大生)。キャンプ初心者……というよりド素人な彼女の出現で、厳の愛する“ソロ”空間が少しずつ変わっていきます。

とりあえずふたりが始めたのは……

  • 現地集合現地解散
  • 互いのテントはそれなりに離す
  • やれることは自分だけでやる
  • 独りになりたい時間を邪魔しない

上記を前提にした“ふたりでソロキャンプ”。雫が師匠の厳にいろいろ教えてもらうテイストで、“おっさん”と女子短大生の奇妙なキャンプライフがスタートすることに。

著:出端祐大
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つかず離れずのラブコメは危なっかしさ満載!?

それこそ「漫画じゃないんだから」などといわれそうな、「なんだそりゃ」設定ではあるものの、本作は不思議と素直に読み進めることができます。おそらくそれは、確かな画力と訴求力がある物語、無理のない演出がもたらす効果なのかと。

初期設定こそ強引ながら、その後の展開が丁寧に描かれるため、知らず知らずとハマッていく感覚でしょうか。

逆にそれが、ストーリーのじれったさに繋がる面も否めませんが。“つかず離れず”で煮え切らないふたりの関係性は、まさに微速前進。作者が織り込みたかったラブコメ要素で、作品の魅力が少しずつ膨らんでいきます。

そんな過程を「しょうがないなぁ」と思いながら楽しめることも、漫画が持つ魅力のひとつなのでは? このテの作品は趣味題材ありきで、肝心の“漫画”要素が今ひとつなモノも少なくありませんが、仮にそうであれば、第45回講談社漫画賞(2021年)・総合部門最終候補作にはノミネートされていないはず。

また、作風や登場する女性キャラの描写には、作者がアシスタントを務めていた、ふなつ一輝(別名・ふなつかずき)作品の影響も色濃く感じられます。

同氏の代表作『華麗なる食卓』『すんどめ!!ミルキーウェイ』(ともに集英社)、『土下座で頼んでみた』(KADOKAWA)などを読まれた方ならおわかりでしょうが、危なっかしすぎながら芯が強くタフ&パワフルな女子に、孤独な“おっさん”など太刀打ちできるわけがありません(苦笑)。

孤独を楽しむソロキャンプの魅力とは

もちろん、本作のメインテーマはソロキャンプ。

自然と一体化するスタンスでテントを設営し、薪となる木枝や葉を拾い、ファイヤースターターで火をおこし、焚き火を前に孤高な夜を過ごす……。ディープな趣味の世界“野営”が、主人公の姿を通してじっくりと描かれます。

作者自身もソロキャンプ歴20年以上というだけに、その描写はアウトドア経験者が見ても納得できるもの。昨今のキャンプブームに乗った、小手先だけのキャンプ漫画とはひと味違います。(その分、クセも強いので好みは分かれそう?)

と同時に、テント用「ペグ」の使い方など経験から身に付く野営術は、キャンプ初心者向け指南書にもうってつけでしょう。

主人公・厳のモットーは、「甘えず、投げ出さず、自分だけでなんとかする」「孤独(ソロ)を楽しめ」「不便を楽しみ、そして自然を楽しむ」「自然の中で、自分だけでどれだけのことができるのか。それを楽しむのがソロキャンプ」。ちょっとばかり説教じみた言葉からは、『孤独のグルメ』(原作・久住昌之、作画・谷口ジロー/扶桑社)の井之頭五郎も彷彿とさせます。

主人公の中年男が独り食事を楽しむだけで、ドキュメンタリードラマ的に男の心情を描きつつ、淡々と進む物語。そんな同作品の世界観自体、本作と相通じるものがあるのかもしれません。“孤独”や“孤高”の背景に見え隠れする、“孤”の概念で。

2018年から2023年まで漫画雑誌「イブニング」(講談社)で連載されていた『ふたりソロキャンプ』ですが、同誌の休刊により講談社の漫画アプリ「コミックDAYS」に特別番外編(2023年7月発売のコミックス16巻に収録)を掲載後、第2部から漫画雑誌「モーニング」(同)に移行することが発表されています。

物語的には、厳と雫の関係性が大きく動き始めたところで第1部完結に。今後の新たな展開に向け、最初から読み始めるにはちょうどいいタイミングかもしれませんね。

著:出端祐大
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この記事を書いた人

コミック、アニメ、鉄道、バイク(カブ主)、クルマ、旅、温泉、キャンプ、歴史&城、Audio&Visual、阪神タイガース、NFLなど、好きなモノがありすぎて困る多趣味人間な物書き(フリーライター)。神棚作品は『逮捕しちゃうぞ』『きまぐれオレンジ☆ロード』『ARIA』。

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