『ボクとキミの二重探偵』クセ強めなキャラクターが紡ぐミステリーに“沼る”――読むほどにこだわりを感じる作風がじわる

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ボクとキミの二重探偵
『ボクとキミの二重探偵』(原作・辺天使、漫画・津田穂波/集英社)
目次

コミックス1冊分で読者に仕掛ける構成が豪胆&痛快

過去から現在に至るまで、実に数多くの探偵作品が誕生しており、近年ではそのバリエーションも多岐にわたっている。少し本題からそれるかもしれないが、例えば「SixTONES」の松村北斗&「なにわ男子」の西畑大吾のダブル主演で連続ドラマ化され、テレビ朝日系列で放送中の小説『ノッキンオン・ロックドドア』(青崎有吾/徳間書店)。同シリーズは、密室など不可能な状況で発生した事件のトリック解明が得意な探偵と、遺留品などから犯人の動機の解明を得意とする探偵、相棒でありライバルでもある、2人の探偵による異色なバディが面白い。

挙げていけば切りがないほど探偵ものが豊富にある中、本作も探偵作品のひとつであり、読み始めるとコメディタッチのテイストながらも、しっかりとしたミステリーに仕上がっている。作品の幕開けとしては及第点か……と思っていたところ、単行本第1巻を読み終えた瞬間、本作の醍醐味というか輝きが、その“真価”を発揮し始める構成には驚かされた。

ダイナミックでスケール感あふれる仕掛けは読んでいて痛快。ここまで紹介した時点でも、何も言わずに1巻を読み始めてもらいたいとことではあるが、強いてギミックを表現するのであれば、1冊分のエピソードを丸ごと使った“承前”“前フリ”として使っていて、読み手の心をあらゆる方向に揺さぶってくるのだ。

著:辺天使, 津田穂波
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キャラクターとストーリーの絶妙なバランス感で魅せる

気弱で“ぼっち”の高校2年生、通称「ボクちゃん」こと僕徒レオ。ある日、クラスメイトが行方不明になった事件に興味を持った隣の席の女子生徒・君乃ミキと行動をともにし、事件の真相解明を目指すことになる……というあらすじだ。ジャンル的には“一応”学園推理サスペンスとなるのだろう。

メインキャラのふたりは良い意味で個性が極端に強め。読む人によっては好みが分かれるところかもしれないが、読み進めているうちにきっとクセになるはず。1巻終盤で明らかとなる事実によって世界の見え方が変わり、さまざまな角度から興味深く味わえるようになるのもお見事といえる。

第1話で感じた何かが、第1巻の結末で形となって読者に訴えかけてくる。ストーリー的にも笑いを交えつつ、テンポ感ある展開とキャラが立った犯人などで魅せてくるエピソードがあるかと思えば、本作の軸に関わる秘密をほのめかすようなストーリーも絶品だ。

「2」へのこだわりと愛を感じる仕掛けが抜群

本作は全8巻で完結済み。ボリューム的には短~中編といったところだが、すべてを最後まで描ききっている感がひしひしと伝わり、もう少し読みたい気持ちはあるものの、読後感も悪くなく好感が持てる。

そして何より本作は、タイトルにも「二重」の文字が入っているが、「2」にこだわった複数のギミックが盛り込まれているのが興味深い。詳細を書くとネタバレになってしまうので避けるが、最初は偶然かなと思わなくもないが、読み進めていくうちにさまざまな「2」にまつわる要素が盛り込まれていることに気づき、やがて必然だと理解する。その瞬間がなかなかに心地いい。

山あり谷ありの展開&仕掛けの数々で、読みながら右往左往してしまう可能性も否めないが、読めば読むほど味と深みが堪能でき、気づけば自然と世界観に“沼って”しまうだろう。作品タイトルの「二重」に込められたさまざまな意味がストーリーと共に脳内に染みわたるなど、作品のポテンシャルの高さには素直に敬意を表したい。まさにどっぷり浸りたくなる一作だ。

著:辺天使, 津田穂波
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この記事を書いた人

映画やドラマ、アニメにマンガ、ゲーム、音楽などエンタメを中心に活動するフリーライター。インタビューやイベント取材、コラム、レビューの執筆、スチール撮影、企業案件もこなす。案件依頼は随時、募集中。

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