『ネコノヒー』——失敗続きの残念な猫の日常には、毎日を刺激的に過ごすヒントが詰まっている

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ネコノヒー
『ネコノヒー』(キューライス/KADOKAWA)

※ややネタバレあり

目次

一見可哀想な猫の毎日に隠された、たくさんのハッピー

日常の中で幾度となく経験する小さな失敗。

実に小さな事だけれど、その都度イライラして、地団駄を踏んだり、舌打ちしたり。裏を返せばそれだけの小さな幸せがある事に、なかなか気付けない。日常で刺激を得られなくなると、私達は日々を同じ事の繰り返しのように感じ始め、なんて味気ない、つまらないものだと考えるようになる。

実際、同じ1日など1つとなく、たくさんの刺激が溢れているというのに―。

『ネコノヒー』は、何をしてもどうも上手くいかない残念な猫・ネコノヒーが、それでもサクセス(成功)を目指して頑張る姿を描いたユーモラスな4コマ漫画である。

ネコノヒーの毎日は、そこにある数々の小さな幸せに気付かせてくれる。

ネコノヒーは失敗続きで、なかなかサクセスに至ることができない。

わざわざ買ったチーズをハンバーグにのせ忘れてしまったり、ピザを持ち上げたら具が全て落ちてしまったり、タコ足配線が気になって旅行を楽しめなかったり……、私達が経験する日常の「あるある」が詰まっていて、思わずクスッとしてしまう。

即ち、サクセスを目指していれば幸せな瞬間にもなるということだ。

カップ焼きそばの湯切りまで剥がしてしまった日があっても、食べられる日があれば幸せ。雨でキャンプが楽しめなくても、夜には晴れれば幸せ。

どんなに失敗しようと、ネコノヒーの毎日は刺激的で、ハッピーなのだ。

愛くるしいネコノヒーの表情と間の抜けた鳴き声がたまらない

本作にセリフというセリフはない。

ネコノヒーの時に切なく、時に楽しい「オ゛ア゛ア゛ァ」などの鳴き声のみ。表情こそが雄弁で、心情が豊かに表現されている。哀愁を帯びたネコノヒーはとにかく愛らしく、生き生きとしている。

特に失敗した際の何とも言えない切なく哀れな表情は、つい抱きしめたくなる程の愛おしさに溢れている。

人間と同様の「あるある」だけでなく、舌を使って飲み物をチロチロと飲む、傘をさしても尻尾だけがずぶ濡れなど、猫ならではの「あるある」があるのも面白い。人間臭いけれど、やはり猫であるところが大変チャーミングである。

また、繊細な描写に加え、水彩絵の具で着色されたイラストは1コマ1コマが美しく、水彩画のアート作品のようでもある。

ストーリーの面白さから成る4コマ漫画としてはもちろん、完成度の高いキューライス氏の作品集としても満足度が高い。

小さな幸せに満ちたネコノヒーの毎日は今日も続く。

お金持ちで心優しい友達のテテーンウサギとのやりとり、ネコノヒーのサクセスのために頑張る人間たちの姿など、日常を描くストーリーの中にもたくさんの刺激がある。

大好きな食事の時間があって、楽しい娯楽やイベントごとがあって、ちょっぴり自分勝手なネコノヒーに苛立ちつつも、甘やかし優しく接してくれる友達がいる。特別なことはないけれど、失敗があれば成功もある。

ネコノヒーは、平凡な毎日の素晴らしさや小さな幸せの瞬間、ただ生きているだけで楽しいと思える瞬間があることを教えてくれるだ。

さらっと読めるのに、冷えた心をじんわり温めてくれる良作

『ネコノヒー』は、残念な猫の、平穏でちょっぴり悲しくちょっぴり楽しい日常が、気楽に楽しめるとSNSで人気に火が付いた。キューライス氏のSNSに随時新作がアップされ、既刊3巻。最新刊となる4巻は、2021年2月27日発売予定。

キュートなイラストがメインのため、肩の力を抜いて気楽に読むことができる。ちょっと可哀想で残念なネコノヒーの姿を見れば、思わず共感し、サクセスを願わずにはいられないだろう。同時に、面白みのない自身の毎日に溢れる喜びに気付くことができるはずだ。

生き辛さを感じている読者の皆さんには、ネコノヒーと共にサクセスを目指し、小さな失敗の裏にある小さな幸せを噛み締めてほしい。

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この記事を書いた人

フリー編集・ライター。ライフスタイルやトラベルなど、扱うジャンルは多種多様。趣味は映画・ドラマ鑑賞。マンガも大好きで、日々ビビビと来る作品を模索中! 特に少年・青年向け、斬新な視点が好み。

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