命より大切なものを知った男の最期の闘い。闇を纏う復讐劇の行く末は——『髑髏は闇夜に動き出す』

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髑髏は闇夜に動き出す
『髑髏は闇夜に動き出す』(TETSUO/少年画報社)

※ややネタバレあり

目次

孤独な人生の先に見つけたささやかな幸せ、奪われた男の心中や如何に

世間に溶け込む平凡な人間が怒りや憎しみに魂を捧げ、復讐の鬼へと堕ちる瞬間、その心の内。気配もなく訪れる悲しみと喪失感。『髑髏は闇夜に動き出す』は、愛するものを奪われた男達による復讐劇を描いた、月並みの類似作とは異なる切なさ溢れる秀作だ。

現在サードシーズン(3巻)まで配信および発刊済、それぞれ異なる男の復讐譚が描かれている。今回は、中でも魂の震える1巻に触れるので、興味を持ったら読み進めてみてほしい。

主人公は、独り身で胃癌を患った89歳の老人・藤村銀三。ある日、空き家だった隣に持田一家が引っ越してくる。心優しい夫、身重の妻、幼稚園児の娘の3人家族で、周囲から孤立していた藤村は近所付き合いを始める。家族の温もりや幸せを知った藤村であったが、幸せの最中、何者かによって持田一家が惨殺されてしまう。余命僅かな藤村は自らの手で犯人らを裁くと誓い、凄惨な復讐を開始する。人生の最後に見つけた小さな幸せを奪われた男の迎える結末とは――。

初めて家族の幸せに触れた時の戸惑い、幸せを感じてからの自然と滲む笑顔、変わり果てた持田家の人々を見つけた時の慟哭、復讐に身を染めた時の憎悪など、とにかく全てを物語る藤村の表情が素晴らしい。

また、日常を描いた普遍的なコマ割りとは打って変わった、大胆かつ躍動感ある復讐シーンの対比は見事である。

著:TETSUO
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復讐の先に待つものとは何か。復讐鬼はかつての自分であるのか

藤村と持田一家は偶然隣同士になっただけの他人だ。それでも、持田一家がもたらした幸せは、藤村にとって命よりも大切なものとなった。非力な老人が復讐に身を捧げることで、おぞましい罰を与えられる程に。

愛情を持って人に接していれば、誰かの救いになることがあるかもしれない。孤独な人生の果てにも、僅かな幸せがあるかもしれない。復讐劇に至るまでの物語には、多様性が謳われ、人と人との関係が希薄と言われる現代にも確かにあるはずの希望が見出だせる。

復讐は憎しみの連鎖を生むだけの不毛な行いである。決して正義などではない。口で言うのも頭で理解するのも容易だが、当事者になったらどうだろう。つまるところ、想像することはできてもその感情を真に知ることはできない。本作では、大切な者を奪われた時、怒りや憎しみといった感情に完全に囚われた瞬間の絶望がまざまざと描かれている。罪が人をどのように壊してしまうか、同じ人間が人間を罰するとはどういうことか、深く考えさせられる。

藤村は闇に取り込まれることで本来の自分以上の力を発揮し、犯人らを追い詰めた。亡くなった持田一家の望みは分からないし、復讐に手を染める藤村は持田一家と微笑み合っていた藤村と同一なのかも分からない。ただ、真っ暗な闇に堕ちた時、藤村は虚無になった。

復讐を終えた時、待つのはハッピーエンドか。一見幸せにも思えるラストを、読者の皆さんはどう捉えるだろう。復讐の鬼と化した藤村の壮絶な最期を追って、考えてみてほしい。

電子書籍でも単行本でも気軽に楽しめる一冊完結作品

『髑髏は闇夜に動き出す』は、愛するものを奪われた男の復讐をストレートに描いた、TETSUO氏によるダークバイオレンス作品だ。連載版、分冊版とあり、各電子書店にてサードシーズンまで配信中。少年画報社より、3巻まで単行本も出版されている。一冊完結のため、手軽に読破可能。

深く考えることも必要ではあるが、犯人は下衆かつ殺害動機も酷い完全悪なので、フィクションとして勧善懲悪ものと捉え、スカッとしたい時に読んでみるのも良いだろう。

ただ、本作の登場人物のように仲間内の関係を保つためや自己保身のために簡単に罪を犯す人間がいることも事実なので、リアリティからは逃れられないのかもしれない……。正義と復讐を履き違えてはいけない。

何はともあれ、89歳を主人公とした類を見ないスリリングな本作は一読の価値あり。手軽な電子書籍はスキマ時間のお供にもぴったりだ。

著:TETSUO
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この記事を書いた人

フリー編集・ライター。ライフスタイルやトラベルなど、扱うジャンルは多種多様。趣味は映画・ドラマ鑑賞。マンガも大好きで、日々ビビビと来る作品を模索中! 特に少年・青年向け、斬新な視点が好み。

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