能力が高すぎたらダメなのか? 勇者が魔王軍に“転職”して奮闘する異色ファンタジー――『勇者、辞めます』

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勇者、辞めます
『勇者、辞めます』(原作・クオンタム、キャラクター原案・天野英、漫画・風都ノリ/KADOKAWA
目次

世界を救った後、勇者はどう暮らしていくのか?

2022年4月からテレビアニメが放送中の本作は、ライトノベル『勇者、辞めます~次の職場は魔王城~』(原作・クオンタム、イラスト・天野英/KADOKAWA)が原作のコミカライズ版。世界の危機を救った勇者が新たな職場で奮闘する姿を描く物語なのだが、実はその新たな職場というのが、勇者自身が戦った魔王軍だった……という設定で、良い意味での“ケレン味”のようなものが感じられる。

そもそも主人公である勇者レオはとにかく“最強”。剣術のみならず魔術や錬金術など、さまざまな技術に精通しており、たった1人で魔王軍を倒してしまうほど。ただその強さ故に周囲の人々からは恐れられてしまい、その結果、人間界から追放されてしまう。そんなレオは、ある目的のために魔王軍への入隊を希望するのだが、当然ながら魔王は拒絶。ところがレオは正体を隠して魔王軍に潜り込むことに成功する、というのが本作の幕開けとなっている。

「出る杭は打たれる」ではないが、能力が高すぎることを理由に周囲から疎まれるというのは、現実世界でもありうる話。ちょっと何とも言えない悲哀を醸し出しているが、そんな人間の“負”や“闇”を基本設定に取り込んでいるあたりも興味深い(※追放されるのは強さだけではない面もあるのだが……)。

著:風都 ノリ, その他:クオンタム, その他:天野 英
¥625 (2024/05/24 19:53時点 | Amazon調べ)

まさかの“転職”に驚かされつつ、読者の“思い込み”を突いたギミックが見事

勇者が魔王城で働き始めるという設定もさることながら、異世界ファンタジーでは主流の「チート能力」についても、時間軸をうまく使った見せ方で深みを出しているのがポイント。別の作品を読んでいるはずなのに、大枠のジャンルが共通しているため、読み進める中で無意識に“パターン”を想起して読んでしまった経験はないだろうか。

「主人公は強くて当たり前」。その要素を不思議に思うことは、異世界ものや“なろう系”を読み慣れている人からすれば、何ら疑う余地はないかもしれない。もっと言えば「○○がきたから△△になる」といったような、ストーリーの大筋の展開についても、自分の経験値から想像することもあると思う。

ところが本作ではそういった読者側の“考察”や“心理”を巧みに利用し、世界観や物語の奥行きや面白さを演出。大きく見せているのに実はほんのり隠されている、テクニカルな技の応酬で読み手を引き込んでくれるのだ。徐々にではあるが、王道とも言える各要素に“理由”を肉付けしていくことが、こうした異世界ものでは逆に新鮮に感じられるから面白い。

目に見えている物語と根底を流れる物語の静かで熱い“協奏”が奥深い

そういった意味では、コミック第1巻は大いなる“振り”と言える面もあるかもしれない。レオの人柄や魔王軍の面々、彼らのやり取り、さらには人間側の事情などを含めると、読み始める前や作品タイトル、前提といったものから受ける印象とは違った感想を抱く可能性も。その先へと読み進めていくことで、第一印象とは異なる表情を見せて楽しませてくれる。作風もコミカルなテイストを織り交ぜながら描きつつ、そこに現在や過去といった時間軸を取り入れられているので読み応えも十分だ。

基本的にはあまり前情報を入れずに読み始めることをおすすめしたいが、あえていうなら“個”と“組織”という観点からも本作はなかなかの味わいがあることをお伝えしておきたい。もちろん単純にエンタメとして満喫すればいいのだが、別視点から深み読みしつつ堪能するのもあり。主人公の生い立ちや目的、魔王の真意など多くの謎も散りばめられているのも◎。4月にコミック版の最新巻である6巻が発売されたばかりなので、アニメや原作小説も視野に入れつつ、一気読みしてみては。

著:風都 ノリ, その他:クオンタム, その他:天野 英
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出演:小野賢章, 本渡楓, 伊藤静, 大和田仁美, 内山夕実  監督:石井久志
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この記事を書いた人

映画やドラマ、アニメにマンガ、ゲーム、音楽などエンタメを中心に活動するフリーライター。インタビューやイベント取材、コラム、レビューの執筆、スチール撮影、企業案件もこなす。案件依頼は随時、募集中。

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