本編主人公・ダイの師匠にして伝説の勇者・アバンの若き日を描く『ドラゴンクエスト ダイの大冒険 勇者アバンと獄炎の魔王』――知られざる過去の“らしさ”とオリジナリティーの化学反応がアツすぎる!

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『ドラゴンクエスト ダイの大冒険 勇者アバンと獄炎の魔王』(原作・三条陸、漫画・芝田優作/集英社)
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人気作のスピンオフとあなどるなかれ

スクウェア・エニックスの看板ゲームタイトルのひとつ、『ドラゴンクエスト』シリーズは、ゲームだけでなく、その名を冠したマンガやアニメが数多く生み出されている。中でも、2020年に2度目のアニメ化が行われるなど、根強い人気を誇るのが『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』。主人公・ダイと、その仲間であるポップやマァムらが魔王から世界を救うために奮闘する姿を描いている。

ゲーム同様、勇者や魔法使い、僧侶といった職業が存在するほか、スライムはじめおなじみのものからオリジナルまで多彩な顔ぶれのモンスターたちが揃う。たとえ原作となるゲームを知らずとも、借りているのは基本となる世界設定に関係する部分のみで、本作はキャラクターもストーリーもオリジナリティーにあふれるものばかりで読者を楽しませてくれる。

そんな名作とも呼ぶべき『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(以下、本編)に、実はもうひとつの冒険譚があることはご存じだろうか。

成功するスピンオフの要素を兼ね備えた作品

『ダイの大冒険』の名を冠したスピンオフは『ドラゴンクエスト ダイの大冒険 勇者アバンと獄炎の魔王』。タイトルから想像つく人も多いかもしれないが、作品の主人公はダイたちの師匠であるアバンで、彼がまだ魔王ハドラーを倒して伝説の勇者となる前の、若き日の物語が進行していく。

本編でも回想シーンとしてたびたび目にする機会があった、アバン対ハドラーの闘い。読者に提示されているのは、アバンがハドラーを倒して世界を救ったという結果だけで、そこまでの道のりやどのようなバトルが繰り広げられたかなど、多くは謎に包まれている。その謎に光を当てるかのようなストーリーは、控えめに言ったとしてもかなり面白い。

スピンオフには、本編の主人公の知られざる過去を描いたり、サブキャラたちの活躍にスポットを当てたり、いろいろなバリエーションが存在する。好みにもよるが、スピンオフ作品の善し悪しは、どのキャラのどの部分に着目するかも大きな要素の一つだろう。そういう意味で本作は、本編でも人気は高いものの、ある意味で神秘のベールに包まれたアバンの明かされていなかった生き様を見られ、ファン心をわしづかみにする設定だ。

本編の世界観&要素を生かしつつオリジナル要素での味付けが◎

本作の第1話「勇者誕生は、本編にも番外編として収録されている『勇者アバン』をベースにリメイクされた内容が展開していく。まずは本編を読んでいた人たちへの心づかいのようなものが感じられ、作者らの熱い思いがひしひしと伝わってくる。そして、リメイク部分終了後、新規エピソードへと突入する否や、気になる要素が次々と登場。気づいたら一気に1巻を読み終えてしまったことを強烈に覚えている。

アバンが若いということは、後にマァムの父となるロカの若かりしころも見られるだけでなく、ブラスやバルトスの姿にも胸が高鳴る。さらにブラスの性格やヒュンケルに関するフラグといった、本編に関するつながりも随所に盛り込まれ、「回収からの伏線」という乙な楽しみ方も。もちろんストーリーが進むにつれ、ブロキーナやマトリフといった“クセスゴ”なキャラクターたちも、変わらぬテンションで盛り上げてくれるのもいい。

当然ながら、過去の時間軸にしか登場しない新キャラクターも魅力的。ハドラーの側近・ガンガディアは、トロル族の突然変異種ながら、パワー&呪文タイプと強力。肥満気味で粗暴、というトロルのイメージが嫌いで、自ら鍛え上げた細身の体なのも悪くない。ストーリーの至るところでアバンらの前に立ちふさがり、ドラマを彩っている。完成度の高いスピンオフには、こういったオリジナルキャラクターの存在も欠かせないものだ。

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この記事を書いた人

映画やドラマ、アニメにマンガ、ゲーム、音楽などエンタメを中心に活動するフリーライター。インタビューやイベント取材、コラム、レビューの執筆、スチール撮影、企業案件もこなす。案件依頼は随時、募集中。

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