あなたは、この家の異常さがわかるだろうか――オカルトライターが気になった“変な家”
「ほら ここ。謎の空間があるんです」。
オカルト専門のフリーライターとして活動する「私」は、近々子どもが生まれる知人から、購入を迷っているというとある一軒家の間取り図を見せられた。閑静な住宅街に建つ2階建てのその物件は、明るくて開放的な内装で一見では好感を持たせる。だがその間取り図をよく見ると、1階にドアもなく入れない謎の空間があるらしい。不動産屋も事情が分からないため、「私」の知見に頼ってきたのだという。
建築に関しては素人ながら興味を抱いた「私」は、その間取り図についてオカルト好きな建築設計士の栗原に意見を求めた。栗原によると、ドアのない空間は「意図的に作られたもの」と言えるらしく、自然に考えるなら設置予定だった収納スペース等のなごりではないか、ということだった。だが、「私」から一軒家の前の住人が「夫婦と小さい子どもの3人家族」であったと聞いた栗原は、物件に謎の空間以外にも「おかしいところ」があると話し始める……。
WEBメディア発、話題の不動産ミステリー! コミカライズでも“生々しさ”は健在
進学、就職、転勤、結婚……「家の間取り」といえば、専門家でなくとも多くの人が、人生のふとしたタイミングで一度は考える時期が訪れる物事のひとつではないだろうか。賃貸であっても建売であっても、家具の置き場や家事動線がどうやらこうやら、ロフトや吹き抜けがいるやらいらないやら、こだわりたいポイントは枚挙に暇がない。『変な家』はそんな、誰にとっても身近な「家の間取り」がキーワードとなった、話題の不動産ミステリーのコミカライズだ。
初出はゆるく笑えるコンテンツに特化したWEBメディア「オモコロ」に掲載された、本名と素顔、地声を隠して活動する“雨穴”による一記事だ。笑えるネタ系記事が多い同媒体において異色を放つ記事はネット上で大きな話題となり、追って公開された動画版は2023年7月時点で1,400万回以上再生されるなど注目を集めている。続編が書き下ろされた小説版『変な家』(雨穴/飛鳥新社)もヒット中で朗読劇化も果たし、2024年春には映画の公開も控えるなど驚異の盛り上がりだ。
メディアミックスのひとつとして展開されているコミカライズでも、その現実と地続きであるかのような、生々しいホラーとサスペンスは健在だ。件の間取り図が適宜示されるなか、「私」と栗原らによって繰り広げられる会話に加わる感覚で、“変な家”の異常さについて考えながら読み進めることができる。物語は栗原が指摘する「おかしいところ」からが本番だ。だんだんと背筋に冷たいものが走るのを感じながら、ぜひ自分で読み進めてみてほしい。
不穏な発想から見えてくる不穏なストーリー。現実離れした考えがまさかの……
栗原は、「おかしいところ」のある“変な家”について「不気味な家」「私だったら買わない」と言ったところで話を収める。だが、私はそれをきっかけに不穏な発想を膨らませ、それを聞いた栗原も「ミステリー好きの妄想」と前置きながらさらに不穏なそれらしいストーリーを落とし込んでいく。現実離れした考えに行き着いた「私」だが、なんと
そこに……。第2巻は2023年11月発売予定とのこと。この機会に触れ、続きを待ちたい話題のミステリーだ。