死んだはずの最愛の人にすり替わった「ナニカ」。異変が生じてもなお離れられない彼らを待ち受ける運命とは——『光が死んだ夏』

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『光が死んだ夏』(モクモクれん/KADOKAWA)
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行方不明だった幼馴染の姿をした「ナニカ」を受け入れた先に、未来はあるか

もし、今は亡き愛する人が再びあなたの前に現れたら――。

最愛の人の喪失に耐えられる人はいない。突然の別れであればなおさら。かつての日々を思い出しては涙し、もう二度と会えないのだと実感して呆然とする。言葉にならない悲しみは、残された者にしか分からない。

『光が死んだ夏』は、行方不明だった友人がかつての姿のまま、別の「ナニカ」となって再び主人公の前に現れるホラー・ミステリー漫画だ。1話で詳細は明かされていないが、恐らく友人はもう亡くなっていることが推測できる。

『ペット・セメタリー』(スティーヴン・キング/文藝春秋)や『いま、会いにゆきます』(市川拓司/小学館)など悪霊、亡霊と正体は異なるが、死者が蘇る物語は古くからある。本作は連載中で「ナニカ」の正体は未だ謎だが、日本ならではの土着信仰に紐付いた邪悪な存在だと窺える。主人公の生まれ育った土地とも深く関係していそうなので、今後の展開に期待大。どの作品にも共通しているのが、残された者の「愛する人にもう一度会いたい」という強い思い。最愛の人の正体が幽霊であれば感動の物語になるのだが、確実に異なる「ナニカ」であればどうだろう。目の前にいるのは友人ではない「ナニカ」。「不幸をもたらすかもしれない」と分かっていても、離れることができない。本作にはそんな愁いや切なさが満ちている。

ある集落に暮らす主人公の佳紀。山で行方不明になった幼馴染の光が1週間後に戻るが、それは光と同じ姿をした「ナニカ」だった。

光ではないと分かっていながら、佳紀はそれでも側にいてほしいと願い、いつも通りの日々を過ごしていく。が、ヒカルが戻ってから、集落ではさまざまな異変が起こり始める。「ナニカ」を受け入れた佳紀と集落を待ち受ける運命とは……。

著:モクモク れん
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深く結び付いた2人の少年を描く儚くも美しい新感覚ホラー

現代的な作画は美麗で、佳紀と光の対照的なキャラクターも魅力的。不快感や不安感を煽るセミの鳴き声やカエルの鳴き声といった音が大きさや濃さの異なる文字で効果的に表現されており、作中に漂う不穏さを増長させている。特徴的な方言のセリフによって物語はゆっくりと進む。だが停滞感はなく、スムーズに読み進めることができる。昔ながらの田舎、何気ない日常の描写は素晴らしく、作品を通して独特な世界観に包まれる。

何より、邪悪でありながらどこか美しささえ感じさせる「ナニカ」、その「ナニカ」に堕ちゆく佳紀の描写は秀抜。また、無二の文字表現が実に巧みで、未知の恐ろしさを盛り上げている。

幼い頃からずっと一緒に育ってきた佳紀と光は、深い絆で結ばれている。

光が「ナニカ」に代わってしまったと気付いていながら離れられない佳紀と、感情の種類は理解できずとも佳紀が好きだと度々口にする「ナニカ(ヒカル)」。

一般的に男性同士の恋愛を描いた作品はBLと呼ばれるが、それとは異なり、ただ純粋に「好き」の気持ちや、2人の友情を超えた、それでも恋愛とはまだ言い難い関係性がさらりと描かれているのが素敵。

姿や記憶が同じでも、佳紀はヒカルが光ではないことを理解している。心のどこかで、このままヒカルを受け入れたままでは良くないことになるのも感じている。分かっていても、忠告されても、周囲に異変が生じ始めても、それでも佳紀は再び光を失うわけにはいかないのだ。

同じ姿をしていても、どんなに佳紀を好きでも、ヒカルは決して光にはなれない。どこまでいっても「ナニカ」のままだ。どんなに愛おしくとも、「ナニカ」との未来に確実に希望はないのである。

第2巻でヒカルの正体に迫る描写がある。その正体や待ち受ける未来を知った時、果たして佳紀は何を選ぶのか。残された者のエゴは誰をも幸せにしない。2人と集落に訪れる結末から目が離せない。

続きが待ち遠しい! 現代の漫画を象徴する秀逸なWebコミック

『光が死んだ夏』は、モクモクれん氏による、集落に暮らす佳紀と、その亡くなった幼馴染の光とすり替わった「ナニカ」の行く末を描くホラー・ミステリー漫画である。株式会社KADOKAWAによるWebコミックサイト「ヤングエースUP」にて2021年より連載され、未完、既刊2巻。

美しさの中に怪しさがあり、ジワジワとした恐怖が這い上がる本作。

優しくも切ないホラー作品なので、誰にでも読みやすく、自然とその世界観に引き込まれてしまう。家族や恋人、友人など愛する人を思い浮かべれば、佳紀の気持ちが痛いほど良く分かるはず。

集落に隠された過去やその地に根付く信仰など、「ナニカ」にまつわる真相が今後明らかになるだろう。さまざまな要素が相まって、第2巻以降もますます面白くなる予感。近年の作品において、続きがとにかく待ち遠しい一作!

現代の読書スタイルに合ったWeb連載なのも興味深い。スマホがあれば気軽に読めるので、未読の人はぜひ読んでみてほしい。

著:モクモク れん
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この記事を書いた人

フリー編集・ライター。ライフスタイルやトラベルなど、扱うジャンルは多種多様。趣味は映画・ドラマ鑑賞。マンガも大好きで、日々ビビビと来る作品を模索中! 特に少年・青年向け、斬新な視点が好み。

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